耐震診断とは,主に1981年6月より前に(1981年に新耐震設計法施行)に施工された建築物を対象とし,
Is値(構造耐震指標)とCTUSDを計算し耐震診断の目標値Iso値(構造耐震判定指標)や目標とするCtuSDと比較し
大地震時に建物がどの程度安全なのか,または,どの程度被害を受ける可能性があるかを判断しています。
耐震診断の方法には、一次診断,二次診断,三次診断の3種類があり,耐震性を判定方法がかわり
診断次数が高くなるにつれて,診断精度は上がりますが,診断に要する時間なども長くなってしまいます。
学校などはほとんど2次診断で行われています。
| 各診断方法 | 耐震性の判定判定方法 |
|---|---|
| 一次診断 | コンクリート強度と柱や壁の断面積による簡易的に耐震性を判定する。 |
| 二次診断 | 「梁」は十分な強いものと仮定し、柱や壁の部材断面により耐震性を判定する。 |
| 三次診断 | 柱,壁に加えて,梁の強度を考慮し架構の壊れかたを想定し耐震性を判定する。 |
| Is=Eo×SD×T | Eo:保有性能基本指標で「柱や壁の強度」と「柱や壁の変形性能」により決まる値 |
|---|---|
| SD:形状指標で建物の柱や壁の配置がどの程度上下階や同一階の東西南北方向でバランス良く配置されているかにより決まる値 | |
| T :経年指標で建物の老朽の程度(ひび割れの状態)などにより決まる値 | |
| Iso=Es×Z×G×U | Es: 一次診断用0.8 二次診断三次診断0.6 |
| CtuSD≧0.3・Z・G・U | Z:地域指標で東京だったら1.0 |
| G:地盤指標で建物が平坦な場所に建っていれば1.0 | |
| U:用途指標で一般的な建物の場合1.0 |
東京などの一般的な建物ではIsoやCtuSDは下式のようになります。
Is>Iso=0.60(0.80) ( )内は一次診断の場合 CtuSD≧0.3
満足する場合「安全(想定する地震動に対して所要の耐震性を確保している)」とし,
そうでなければ耐震性に「疑問あり」とします。
Iso値の設定の根拠となっているのは 耐震診断基準に
1968年十勝沖地震(M7.9、震度5)および1978年宮城県沖地震(M7.4、震度5)
で中破以上の被害を受けた鉄筋コンクリート造建築物の診断の結果を比較した結果
震度5程度では、Is値が0.6(1次診断の場合0.8)以上の建物に柱や耐震壁等にひび割れは発生する
被害はあるが,鉄筋がむき出しになったり倒壊などの大きな被害が生じていない
という記述があるからです。
耐震診断の手順は大まかに次のような順序で進みます。
設計図が無い場合は図面を復元する事が必要になります。
また,柱や壁の強度や変形性能を求めるために重要なのは柱と壁がどのような関係にあるのか把握することが
重要なことなので設計図の軸組図がとても役に立ちます。軸組図がない場合には軸組図を復元します。
建物が30年以上使われていると,改修等により壁等が設計図と異なる位置にある場合もあるので
等を現地にて確認するのです。
また,壁等からコンクリートの採取も行います。採取したコンクリートは,公的機関でコンクリート強度等を測定してもらいます。
その測定結果により診断用のコンクリート強度の設定を行ったり,施工性,老朽化の評価に用いたりします。
また,構造図がない場合などは,柱梁壁等の鉄筋の径や本数等を調べるために、部分的にコンクリートをはがしたり、
X線や超音波により、診断するうえでの鉄筋の径や本数を想定します。
全ての柱や壁を調査すると大変な手間と期間、費用がかかることになるため、調査箇所を決める場合の判断が重要となります。
などの計算が終わったらやっとIs値やCtuSD値が求めらます。
また,Is値やCtuSD値のほかにも建物の形状等によりその他の計算もします。
そして計算した内容等がわかる資料を作成していきます。
計算した結果を建物の所有者に報告するための文章を作成します。
耐震診断を行った結果「想定する地震動に対して所要の耐震性に疑問あり」と判定された場合
なにが原因でそのような判定結果となったのかを示すのです。
診断者が計算し,まとめた結果を判定機関に提出し,内容が妥当がどうか判断してもらいます。
判定機関には,判定委員となっている10人程度の大学の先生が耐震診断結果の妥当性をみてもらいます。
判定委員の中で2人程度が 物件の担当になり "本委員会"に 出しても問題ないこと確認するための"部会"を
2回程度行われます。
本委員会では,担当の判定委員以外の方々にも診断した内容が妥当がどうか判断してもらい
本委員会で診断した内容が妥当だと判断してもらえた場合"評定書"を判定機関に作成してもらいます。
以上が大まかな耐震診断の内容となります。
補強後のIs値やCtuSD値を建築物の所有者と相談の上決定します
もちろん補強後の目標の設定値が高いと補強工事にかかる費用もかかってしまいます。
一般的な耐震補強方法には,建物の強度を増加させる方法と建物の変形能力を向上させる方法の2種類あり、
下表のような補強方法等があります
| 建物の強度を増加させる方法 | 建物の変形能力を向上させる方法には |
|---|---|
| 新たに鉄筋コンクリート造の耐震壁を増設する 既存の壁の厚さを増す 既存の壁の開口を塞ぐ 既存鉄筋コンクリート造フレームの中に鉄骨ブレースや鉄板壁をはめ込む 既存建物のフレーム外部に鉄骨ブレースを付加させる |
耐震スリットを設置して壁と柱や梁を絶縁する 既存鉄筋コンクリート造の柱に鋼板や帯板の巻き立てる 柱に炭素繊維を巻き付ける 溶接金網や帯筋によるRC巻き立てる |
また,基礎部分や中間階に新しく免震装置を設置する免震補強方法や地震エネルギーを吸収する制震装置を用いる制震補方法もあり、"耐震補強一覧"と入力しネットで検索をしてみると 建設業者が開発した耐震補強方法等が たくさんみつかります。
詳細な補強設計をはじめる前に,耐震診断の結果を考慮して補強方法や補強位置をあらかじめ決めます。
コスト・工期はどうか,また,現地にいき補強工事にも支障がないかなど施工性等も考慮し、
最適な補強方法や位置を決めておきます。
耐震補強の場合,強度を増加させる方法と建物の変形能力を向上させる方法を組み合わせて行なわるのが一般的です。
例えば,耐震診断では,建物の階ごとの変形性能(第2種構造要素)を計算するのですが,"極脆性柱(極短柱)"と
判断された柱が原因でその階の変形性能が悪いという結果になってしまった場合
建物の強度を増加させる方法だけで補強をしようとすると,補強箇所数がとても多くなってしまいなす。
極脆性柱(極短柱)に変形能力を向上させる補強(耐震スリット)を行い階の変形性能を良くすることで,
強度を増加させる補強の箇所数を減らすことができます。
また,耐震診断の結果「建物の強度のバランスが悪い建物」となった場合なども
剛性や強度の高い補強部材をバランスが良くなる位置に配置しSD指標も良くすることにより
強度を増加させる補強の箇所数も減らすことができます。
補強部材を既存の鉄筋コンクリート造フレームに取り付けるので,
設備的なことや意匠的なこともできるだけ考えておきます。
例えば、補強部材をその場所に取り付けると人や物の出入りができなくなるとか
今使っている設備機器が使えなくなってしまうとか設備機器を動かす費用のほうが,
その位置に補強部材を施工するよりコストがかかるといったことがないように。
補強部材の形状や大きさや材料等から補強部材の強度や変形性能を詳細に計算していきます。
また,既存の鉄筋コンクリートと補強部材の接合部も計算します。
接合方法もいろいろありますが一般的には"あと施工アンカー"というものが使われていますが
アンカーの大きさや何本配置するか決めていきます。
補強設計の内容を工事する人に正確に行ってもらったりためや補強工事費を計算したりするため、採用した補強方法の詳細な図面を書いていきます。
耐震補強者が計算し,まとめた結果を判定機関に提出し,耐震補強の内容が妥当がどうか判断してもらいます。
以上が大まかな耐震補強の内容となります。
95年の阪神大震災の際、耐震性が低い建物が倒壊し道路をふさぎ、消防による救援活動や被災地周辺からの援助物資の輸送活動などが大幅に遅れる事態を招きました。現行の耐震改修促進法は、耐震診断を努力義務にとどめており、耐震診断費用に対する補助金は、現状では主に区市などが負担し、都や国が上乗せする形で支出されています。このため地域による格差が大きく診断の実施は進んでいません。
都が昨年度、震災で倒壊の恐れがある緊急輸送道路沿いの建物所有者にアンケート調査を行ったところ、耐震診断の実施率は2割程度にとどまったようです。
震災時に主要幹線道路沿いに立つビルの倒壊による救助活動の遅れを防ぐため、緊急輸送道路沿いのビルやマンションの所有者に対し、耐震診断の実施を義務づける条例が平成23年3月18日都議会にて可決され平成24年4月から耐震診断の実施義務化がはじまる事となりました。
診断対象の建築物は約6000棟に上る見通しで
1次緊急輸送道路沿いに立つ建築物で(平成23年6月に指定)
1981年以前(昭和56年6月1日施行の改正建築基準法以前の耐震基準で施工)の旧耐震基準で建てられた建築物であり
倒壊した場合に道路の半分超をふさぐ恐れがある中高層建築物が対象となり正当な理由なく必要な耐震診断を実施しない場合における公表制度を設け耐震診断実施命令に違反した者等に対しては、罰則を設けられまた,特定沿道建築物の所有者に耐震改修等の実施努力義務を課す様です
新制度では、都の補助金を増額し施行期日は平成23年4月1日です。ただし、一部は同年10月1日又は平成24年4月1日です。
平成23年4月1日 条例施行
平成23年4月頃 耐震化指針(技術的な指針)の告示
平成23年6月頃 特定緊急輸送道路の指定の告示
平成23年10月1日 耐震化状況の報告書の提出開始
平成24年4月1日 耐震診断の実施義務化開始
緊急輸送道路は重要度に応じて1次から3次まであり
1次緊急輸送道路:応急対策の中枢を担う都本庁舎、立川地域防災センター、重要港湾、空港等を連絡する路線
2次緊急輸送道路:一次路線と区市町村役場、主要な防災拠点を連絡する路線
3次緊急輸送道路:その他の防災拠点(広域輸送拠点、備蓄倉庫等)を連絡する路線
1981年 新耐震基準始まる