ファインフレーム80とは

需要の高い中高層RC造において「建物形状」「層数」といった一定条件を満たすことで
標準鉄筋量80kg/㎡  (鉄筋量は施工床面積あたりとし、基礎を含む)
のRC構造躯体を実現する、さくら構造独自のゼロコスト高耐震 高耐久工法です。

一般的に耐震性を向上させようとすると建設費も増加してしまうのが現実です。そこで、わたしたちは今まで培ってきたコスト最適化技術を活かし、構造躯体費を節約しながら高耐震高耐久を実現したファインフレーム80を開発しました。

構造形式は剛性や強度が上がることで地震に対する抵抗力を高める連層耐震壁を採用し、耐久性に配慮するため、ひび割れ抵抗性能向上仕様を採用しています。

工法適用条件

建物形状について

  • 片方向耐震壁付きであること
  • 耐震壁は原則1階まで連続する連層耐震壁とすること
    ※部分的な下階壁抜けは許容するが、完全なピロティー形状は不可とする
    ※最上階とその直下の階は耐震壁を一部なくす事が可能
  • 耐震壁は極端な偏心を避けバランス良く配置すること
  • 偏心率に大きく影響する過度なセットバック等の不整形な形状が無いこと
  • ラーメン方向の柱割りスパンは6~8m程度とし、極端なロングスパンを避けること
  • 耐震壁方向の柱割りスパンは9~11m程度とし、極端なロングスパンを避けること
  • 基準階高さは原則2850mm以下とし極端に高い階高としないこと。

建物のプランに合わせて形状は調整が可能です。
事前の構造計画相談に応じます。

層数について

層数と地域地震係数Zの関係

地域係数 Z

最大層数

Z=1.0

10層まで対応

Z=0.9

12層まで対応

Z=0.8

14層まで対応

Z=0.7

16層まで対応

層数 : 最大16層以下(地震地域係数Zによる)

適用可能な層数は建物形状や地盤種別により増減します。

主要用途

主要用途 : 共同住宅、ホテル等

仕様と特徴について

ファインフレーム80工法

一般的なRC

耐久性

耐震性

コスト

施工性

プラン自由度

ファインフレーム80は「建物形状」「用途」等の条件をクリアすることで鉄筋量80kg/㎡以下を実現する、さくら構造の独自工法です。耐久性向上の観点から、ひび割れ抵抗性能向上仕様の採用を推奨しています。構造躯体最適化設計を目的としたうえで、一般的な建物以上の耐震性を確保するために保有耐力の下限値を設定し、さらに層崩壊の防止の検討を必須としています。そのため「経済性」「耐久性」「耐震性」を兼ね備えています。

ただし、高耐震実現のため片側耐震壁付となり、「プランの自由度」は一般的なRCラーメン構造よりも劣ります。この点においては、初期計画段階から構造設計者と相談することができれば、プランする人の腕でいかようにもできます。是非、ご相談下さい。

仕様

  • スリット壁W12採用
  • 壁増しコン20mm以下
  • 基準階階高さ2850mm以下
  • 内部間仕切りは非RC造
  • ひび割れ抵抗性向上仕様の採用

※建物用途や建設地、意匠デザインを考慮に入れ、物件毎に最適な仕様をご提案させていただきます。

※耐震性・耐久性を確保しつつ構造躯体最適化設計の成果を出すために設けた仕様です。これらの仕様はお客様が選択・調整することが可能ですので事前にご相談下さい。

仕様の詳細は資料で確認

構造の特徴

  • 保有水平耐力1.05以上
  • 地盤種別及び固有周期の精査
  • 標準鉄筋量80kg/㎡
  • 層崩壊防止の検討
    最近の研究では柱と梁の曲げ強度比が1.0に近い場合、層崩壊発生や保有水平耐力の低下に繋がる「柱梁接合部降伏」が発生することがわかっています。
    ファインフレーム80では「柱梁接合部降伏」を回避できるとされている、柱梁耐力比を層の平均で1.4倍以上確保する検討を必須としてます。

連層耐震壁の建物の耐震性

連層耐震壁(壁フレーム)構造とは

連層耐震壁とは建物の上から下まで貫く、構造体の壁のことです。柱梁という線材のみを骨組みとする「ラーメン構造」に比べ、耐震壁という面材を骨組みに採用する「連層耐震壁構造」は、建物の上から下まで連続して耐震壁を配置することで、骨組み全体を一枚の板のように一体化することができ、強度・剛性を高めることができます。

連層耐震壁を使用することのメリット

①合理的な力の伝達が可能
建物内で生じる力(建物自体の重量や、積載重量による鉛直力)は全て地盤に伝達されます。 柱梁で構成されるラーメン構造では、床や内部の積載による鉛直力を、水平部材である梁を介して柱に伝達する必要があります。 連層耐震壁構造の場合は、梁にかかる鉛直力は直下の耐震壁へまっすぐに伝達することができます。 建物の上から下まで、力の流れを変えることなくまっすぐに地盤に伝達することができるため、 合理的な力の伝達であり、梁部材への負担を軽減することが可能です。

②建物の変形の制御が可能
建物の各階の変形を均一にすることは耐震性の向上に繋がります。特定の階に変形が集中すると、その階の部材の負担が特別多くなり、最終的に「層崩壊」に繋がります。層崩壊した建物は、崩壊した階の耐震要素は耐力が使いきられてしまっていますが、崩壊していない階の耐震要素は損傷が少なく、耐力が余っている状態になることが多いです。つまり、建物内に数多く耐震要素はありますが、地震に対してきちんと機能したのは極一部に限定されています。

連層耐震壁構造の場合、建物の上から下まで貫くように配置した耐震壁によって骨組み全体が一枚の板のように一体化されているため、特定の層への集中を避けることができます。また、どこかの層で建物が分離してしまう壊れ方ではないため、建物として一体性を維持し続けることができ地震力の再配分ができます。つまり、各階の変形を均一化することで、建物内の全階の耐震要素を無駄なく機能させ、倒壊に対する安全性を各段に向上させることができます。

変形制御のメリットは構造性能だけではありません。建物全体の変形をより小さく抑えることは、地震後の修繕・家具や建具の被害を小さくすることにつながります。一般的に柱梁の線材を骨組みとしたラーメン構造よりも面材である連層耐震壁構造の方が、剛く、部材を極端に大きくすることもなく変形を小さくすることが可能です。

変形制御の重要性

連層耐震壁構造の耐震性は、「建物全体の変形の均一化」に起因する部分が多くあります。変形性能の制御の考え方は、日本の伝統建築から近年の耐震補強技術、制震技術にも反映されています。

【法隆寺五重塔】

五重塔では心柱によって各階の床が連動して揺らされます。
つまり、特定の階の床だけが揺れる(=変形する)ということがなく、
建物全体で地震の揺れを軽減しています

【耐震改修】

東京工業大学すずかけ台キャンパスで行われた耐震改修では、連層耐震壁(ロッキング壁)を用いた手法が採用されています。これは東京工業大学の和田章名誉教授が五重塔の心柱をヒントに考案された手法で、心柱に相当する連層耐震壁(ロッキング壁)が地震時に各層の層間変形角をそろえ、特定層の破壊を防止するという考えに基づいています。

【スカイツリー】

日本で最も高い構造物であるスカイツリーには現代の最新技術が数多く用いられ、その中の一つとして制震システムがあります。この制震システムは現代の技術と五重塔の伝統的構法を組み合わせて生み出され、「中央の柱=心柱」が重要な役割を果たしています。

参考資料(閲覧_21.5.13)
https://www.tokyo-skytree.jp/about/spec/structure.html
https://www.psats.or.jp/column/lab/045.pdf

過去の被害状況に裏付けられた耐震性

1995年の兵庫県南部地震では、ラーメン構造はピロティ階や中間階の層崩壊が数多く発生しましたが、片方向が必ず連層耐震壁構造となっている壁式ラーメン構造の建物は、2次壁(耐震壁ではない壁)や接合部でのひび割れが発生したものの、全般にわたり被害が非常に少なかったという記録が残っています。このことから、連層耐震壁を適切に計画することで、地震被害を少なく抑えられる、耐震性を向上させることができるということが、過去の被害状況からも裏付けられていると考えられます。

ラーメン構造 連想耐震壁構造
力の伝達効率
直下に伝達が可能
建物剛性
階ごとの変形のばらつき 大きい 均一
倒壊に対する安全性

未曾有の災害への安全性の担保

日本の建物は極端な言い方をすると、耐震基準(いわゆる法律)を信じて設計しています。 この耐震基準ですが、あくまで設計のための「仮定」に過ぎないのです。 例えば、地震力の分布形状を示すAi分布などは過去の地震によって修正、改善が繰り返されていますが「自然現象をそのまま表す」ことはできません。この不確定な現象を設計のため「日本ではこの考え方・数値を最低限守るように」と設定されたものが耐震基準です。 私たち構造設計者は基準や指針の数値の真意を理解し、建物の安全性に配慮する必要があります。

さくら構造では、「想定外の」「予測以上の」という言葉がほぼ必ず付くといっても過言ではない自然災害に対し、層崩壊や脆性崩壊といった地震の再配分が難しい計画ではなく、骨組みを一体化させ、建物の性能(潜在能力というべきかもしれません)を最大限に生かす計画をすることが未曾有の災害(=仮定と異なる事象)に対しても安全性を担保できる機能(フェイルセーフ)が必要であると考えています。

最後に

もしかしたら、躯体数量を減らすという点において、構造躯体最適化設計に取り組むことに躊躇している方もいらっしゃると思います。さくら構造は、躯体数量を適正化するために耐震性を犠牲にするという設計はしません。構造躯体最適化設計によって見つかった余剰コストを適切に活用することで高耐震建築を創り出していくという考えで設計しています。

高耐震 高耐久となることで施主やエンドユーザーにメリットがあることはもちろん、ファインフレーム80を採用することで捻出できた構造躯体費を物件の「さらなる高耐震化」「粗利改善」「内装や設備のグレードアップ」「価格競争力アップ」へ再投資することが出来ます。つまり、今までの建物と比較してゼロコストで、問題点を解決しながら、より価値の高い建築物を作り出すことが可能となります。

さくら構造の持つ構造躯体最適化設計の技術は、様々な建物のプラン、オーナー様の要望やグレードに合わせることが可能ですが、構造躯体最適化効果を最大限発揮するために、プランがかたまる前の初期段階から構造設計者がプロジェクトに関わることができるタイミングでご相談いただくことをおすすめします。

さくら構造構造躯体最適化SVシステム工法

自社工法に関するコラム

さくら構造(株)は、
構造技術者在籍数日本国内TOP3を誇り、
超高層、免制震技術を保有する全国対応可能な
数少ない構造設計事務所である。
構造実績はすでに5000案件を超え、
近年「耐震性」と「経済性」を両立させた
構造躯体最適化SVシステム工法を続々と開発し、
ゼロコスト高耐震建築の普及に取り組んでいる。

【さくら構造株式会社】
事業内容:構造設計・耐震診断・免震・制振・
地震応答解析・
構造躯体最適化SVシステム・
構造コンサルティング

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